製綿工程
原綿の仕入れ
海外から送られてきた150kg〜250kgの原綿を荷受けします。綿は主にインドから輸入しています。アメリカ、メキシコ、ペルー、トルコなど他地域の綿を仕入れることもありますが、価格、品質など総合的に比べるとやはりインドの綿を超えるものはなかなかありません。
オーガニック綿はトレーサビリティの観点から、いつ、どこから、どれだけ届いて、どの商品に使われたかを細かく記録しています。置き場も明確に分け、その他の綿と混ざらないようにしています。森製綿所のオーガニック綿に対する一連の取り組みは、オーガニックテキスタイルの世界基準GOTS・OCSでも認証されています。
混打綿
届いたばかりの原綿は固く圧縮されています。また、綿の葉や種子などが混入していることも多く、すぐにシート状に加工することができません。
そのため、作る綿の仕様をもとに規定の比率・重量分の綿を混打綿機へ投入し、棒状の機械で叩きながら解きほぐすとともに除塵(葉カスや種子片を取り除く)します。ほぐれた綿は、空気圧によってダクトを通り、梳綿の工程へ送ります。
業者によっては次のカーディングを行わず、混打綿の状態で布団を作ることもあります。
梳綿(カーディング)
ダクトからカード機に送られてきた綿は、剣山のように細い糸が並んだ針布とノコギリのような刃がついたローラーの間を通ります。その間は狭く、綿は針と刃によって繊維を一本一本平行に揃えられ、規格外の短い繊維が除去されます。
綿は何層も重ねられ、空気を含んだ綿菓子のような、薄くふわふわとした綿シートになってカード機から出てきます。これを玉綿(たまわた)と呼び、丁寧に折り畳んで全国の布団店に出荷します。
カーディングは、かつては町内の製綿店・布団店でよく見られた光景ですが、個人店の衰退とともに姿を消し、現在では森製綿所以外に東京都内で数軒、全国でも数十軒程度と言われています。
厳選された
綿素材
綿へのこだわり
綿の品質は繊度と呼ばれる繊維の太さによって分類されます。繊度3.4〜4.4が一般的な太さですが、森製綿所が使用するのは6.6〜7という綿。極太で弾力があり、繊維の長さも短いのが特徴です。ざらっとした肌触りのため衣類などには不向きですが、コシのあるふっくらした布団を作るには最適です。
多くの綿は細く長い繊維へと品種改良されていますが、私たちはデシ綿と呼ばれるアジア在来種の綿をインドから買い付けています。年間約30tに及ぶデシ綿を輸入・加工し全国に卸しています。収穫前から先物買いをすることで、長年にわたり実綿(ガパス)が大きく、雑物が少ない上質な綿を安定して仕入れることができています。
近年は、SDGsやトレーサビリティなどの観点から、オーガニック製品のニーズが年々高まっています。森製綿所が仕入れているオーガニック綿は化学肥料や殺虫剤だけでなく、遺伝子組み換え作物の不使用を徹底しています。種の段階から、収穫し工場に運ぶまでの間もこまめにGMO検査を行い、遺伝子改良を行った綿が混入しないようにしています。
また、有機農法の指導だけでなく子どもの教育支援や医療支援、女性の就業支援など生産者の暮らしを包括的にサポートし、国連をはじめ世界各国で高い評価を得ています。
機械のメンテナンス
森製綿所の要とも言えるカード機(綿の繊維を一定方向に揃える機械)は昭和54年に製造されたもので、メンテナンスや修理を重ねながら40年以上同じ機械を大切に使い続けています。機械メーカーがすでに廃業しており、新しいものに買い替えることができないためです。
綿くずや埃がギアに絡まったまま使い続けていると故障の原因になってしまうので、毎日始業時と終業時に1時間ずつ機械清掃を行います。通常の綿からオーガニック綿に切り替える際も、綿の混入を防ぐため清掃を行います。
また、繊維の方向を揃える針は使っていくうちに摩耗してしまいます。そのままにしていると繊維が揃わなかったり平らにならなかったりして良い綿に仕上がらないため、こちらも定期的な交換が欠かせません。綿を送る竹製のベルトコンベアも消耗品なのでこまめにチェックしています。
コストがかかるため、あるいは事業縮小のため、なかにはメンテナンスを怠る業者もあります。埃の除去、注油、部品の交換……地味な作業ではありますが、日々の清掃やメンテナンスを怠らず、機械を丁寧に使い続けることが森製綿所の品質維持の秘訣でもあります。